『THE FIRST SLAM DUNK』、観た

井上雄彦監督の映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)、観た。

『SLAM DUNK』はもちろんバスケ漫画の金字塔だが、原作者自身によるアニメ映画化ということで、往年のファンの期待と不安は高まっていた。過去のTVアニメ版と声優キャストを一新させたことでネガティブな声が大きくなっていたが、わたしは「もう30年近く前の声優を変更しても仕方ない」と思った。映画公開まで話のあらすじも隠して、山王戦をやるのか違うのかという憶測が広がっていたこともファンを不安にさせたが、それはプロモーションの方針の問題でしかない。ただ、予告編を観ると、クオリティには怪しさが残った。……にも関わらず、公開後の評判はよかった。

観てみると、確かに面白かった。スポーツ漫画史上トップクラスの名試合である山王戦が描かれて、最初から最後まで名シーンが 3D CG で活写されている。ファンであれば必ずぐっとくる。前半はほぼカットされているし、後半もすべてが再現されているわけでないが、映画の尺としてはちょうどいい。宮城リョータを主人公にして、彼の過去も頻繁に挟まれるが、それほどの量でもなく、正直そこはどうでもよくて、メインは山王戦のアニメーション再現であって、それだけで十分だ。

『トップガン マーヴェリック』がほとんどのファンにとってほとんど最高の映画だったように、『THE FIRST SLAM DUNK』もそうだった。逆を言えば、ファン以外が観てどれくらい面白いかはよく分からない。

ファンにとっては面白かったが、それでも結末だけはわたしは微妙に思った。宮城リョータと山王沢北が海外のバスケチームで戦う漫画以後のシーンが描かれるのだが、わたしはこういうシーンが好きでない。『SLAM DUNK』は高校バスケという一瞬の青春の炎を描いた物語であって、「その後」はない。宮城リョータの「その後」を描くくらいなら、まずは原作漫画『SLAM DUNK』の結末をそのまま描いてほしかった。

結局、原作『SLAM DUNK』がすごいってこと。勝ち続けて優勝する物語は楽しいが、そんな人生を送ることができる人はほとんどいない。人が一生懸命頑張っても、『SLAM DUNK』のように山王戦に勝てたあとにボロ負けする。これはそういう哀愁の漫画であって、桜木花道が「左手は添えるだけ」と呟くのも1つの詩だった。

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