『ファイナルファンタジーXII』、プレイした

Steam 版の『ファイナルファンタジーXII THE ZODIAC AGE』をやった。

先に一言で言ってしまうと、面白くなかった。

本来 FF12 は、クエスト社で『タクティクスオウガ』などを開発した主要メンバー、特に松野泰己がプロデューサー・ディレクター・シナリオを担って作られていた。松野は開発途中で病気で降板したが、合わせてスクウェア・エニックスから退社もしている。後任は『サガ』シリーズのディレクターとして有名な河津秋敏が務めた。

結果としてどうなったかというと、確かに松野らしいシナリオや世界観やシステムが見られるが、そうした材料を『ファイナルファンタジー』シリーズ、特に『X』の映像演出でもって調理したため、失敗作が出来上がった。

シナリオは、普通につまらない。松野らしい、戦記もののようなハイファンタジーのシナリオが展開されて、恋愛要素はほぼ皆無の群像劇になっている。それにしても正直いまいちなシナリオだし、『ファイナルファンタジー』の映像演出と松野のシナリオが決定的に合わない。主人公のヴァンが始終ただの無能な脇役になっていることや、結末でヒロインのアーシェが副主人公のバルフレアに恋心を抱いていることが突如明かされること(しかもバルフレアには女の相棒フランがいるのに)は、散々言われていると思う。実際ひどいものだが、まだしも『タクティクスオウガ』のような渋い演出でシナリオを展開させていれば、それらも味になっていたかもしれない。

吉田明彦という一流のイラストレーターにキャラクターデザインをさせているのに、それを 3D に落とし込んでいるのも本当は馬鹿げた話だ。FF12 の 3D 映像は PS2 としてはトップクラスと言っていいものだが(同じく PS2 の FF10 の映像が素晴らしく、同社によるその後発作品である以上、当然ではあった)、主人公ヴァンの髪型や顔立ちをはじめとして、どうも一部の 3D キャラクターの造形には違和感を拭えない。こんなものより、吉田明彦の静止画をそのまま映せばよい。『ペルソナ4』の 3D は FF12 どころか FF10 の足元程度のクオリティだが、副島成記の素晴らしいイラストが大きく映されていたからよかった。『タクティクスオウガ』と比べてすら、吉田明彦の絵が見られない点において、FF12 は『タクティクスオウガ』に映像的に劣ると言いたい。

バトルシステムは評判がよいみたいだが、わたしはこれもあまり評価しない。

  1. フィールド移動と戦闘シーンがシームレス。
  2. 距離や移動の概念があり、近接武器は近づく必要がある一方で、遠隔武器や魔法は遠くから攻撃できる。
  3. ガンビットというシステムがあって、キャラクターの攻撃パターンを簡単なスクリプトのように構築できる。

というシステムで、アイデアとしては理解できる。コンピュータ RPG のバトルシステムについて考えていた人間なら、のあたりを理想形の1つとして思いつくことだろう。が、実際は別にこのシステム、面白くない。いや、自分がガンビットシステムに頼りすぎたのが悪いんだろうか? ガンビットが便利なせいで、ボス戦のときにヘイスト・プロテス・シェルをかける以外はガンビットで自動放置するだけのゲームになってしまった。むしろわたしは、ガンビットをどう組むか、敵によってどうガンビットを組み替えるかに面白みを感じるんだと思ったのだが、そこには全然深みはなくて、簡単な汎用的なガンビットを組んで終わりだった。

FF12 はオリジナル版のあと、『ZODIAC JOB SYSTEM』(ZJS)、『THE ZODIAC AGE』(TZA)とアレンジされたバージョンが出ている。Steam 版はこの『THE ZODIAC AGE』というもの。ただ、このアレンジバージョン2つで導入された「ゾディアックジョブシステム」は本当に謎。オリジナル版では「ジョブ」という概念はなくて、「ライセンスボード」といわれる「スキルツリー」や「スフィア盤」(FF10)のような仕組みで魔法習得や能力強化を行っていく。が、ZJS/TZAでは12種類の「ジョブ」が出て、そのジョブごとに異なる「ライセンスボード」が用意されることになった。しかし、この「ジョブ」は恐るべきことに、キャラクターごとに1つまたは2つしか選べず、ZJS では一度選んだら変更することができない。TZA では「リセット」することができるようになっただけだ。オリジナル版を遊んでいないので何とも言い難いが、この「ジョブ」という制約はプレイヤーにとって自由度を減らす悪印象しかないように感じた。

バトルシステムに対する面白くなさも、もしかしたら ZJS/TZA アレンジによるゲームバランスの崩壊があったのかもしれない。細かい問題点の解消やバランス調整をしたり、単純にグラフィックを HD リマスタリングして向上させたりして、アレンジ版を出すのはいいんだけれど、ここまで大きなシステムの改変をしたのは間違いだと思う。『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』でも大分「ザ・ゴールデン」を悪く言ったが、とにかくアレンジはやったら駄目。

TJS/TZA アレンジである意味一番やばいのは、「ハイスピードモード」という機能の導入。これは L1 ボタンを押すことで2~4倍速でプレイできる機能だが、本当にまずい。こういうのは一種のチート機能のはずなのだが、公式がこんな機能をしかもボタン1つでできるようにしたら、プレイヤーは使って問題ないと思ってどうしても使ってしまう。しかし使ったら一言で言えばゲームの風情がなくなる。

「ファイナルファンタジー」はやはり坂口博信でなきゃ駄目だろうと思う。なので、FF12 はもうすでに FF ではない。

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