アーサー・コナン・ドイル
イギリスのミステリー・SF小説家(1859/5/22 - 1930/7/7)。
著作権が切れていることもあって、多くの出版社から刊行され、それぞれ翻訳も違う。
- 新潮文庫:延原謙訳
- 『シャーロック・ホームズの冒険』の訳が1953年刊なので、非常に古い。
- オリジナルの短編集から一部の短編が切り捨てられており、それらはまとめて『シャーロック・ホームズの叡智』という別の本としてまとめられている。
- ハヤカワ・ミステリ文庫:大久保康雄訳
- 『冒険』の訳は1981年。大久保康雄は多くの英米近代小説を訳した有名な翻訳家だが、今となってはあまり読みやすい訳文でないと思う。
- 『冒険』は上下分冊になっていたりする。
- 河出文庫:小林司、東山あかね訳
- 小林・東山は「日本シャーロック・ホームズ・クラブ」主宰者。ホームズ以外の書籍の翻訳もしているとはいえ、翻訳の専門家という立場でもないためか、訳文から原文の文学性が消えているように思える。
- 多くの注釈が含まれている。
- シドニー・パジェットの挿絵が全点含まれている。
- 光文社文庫:日暮雅通訳
- 『冒険』の訳は2006年。
- 一部挿絵あり。
- 創元推理文庫:深町眞理子訳
- 『冒険』の訳は2010年。深町眞理子は大久保康雄より世代的には後だが同様に有名な翻訳家で、今も読める訳文だと思う。
- 一部挿絵あり。
- 角川文庫: 石田文子、駒月雅子訳
- 『冒険』の訳は2010年。ただ『冒険』は石田文子訳だが、ほかは駒月雅子訳になっている。
元々、注釈と挿絵が豊富な河出文庫版で読んだが、上に書いた理由で訳文がどうも好きになれなかった。そのため立ち読みでほかの訳書を読み比べしたが、訳文が一番よいと思ったのは深町眞理子訳だった。決して一番現代的な読みやすい文というわけでないが、ホームズものの歴史性を考えれば少しくらい古風な方が合っていた。カバーデザインも創元推理文庫版が一番よい。このへんは好みかもしれないから、総合的には創元推理文庫版か光文社文庫版のどちらかがいいと思う。
『緋色の研究』
創元推理文庫版の解説で戸川安宣が言うように、今読むと謎の興味をいったん放置して過去の背景を長々と描く二部構成に古さを感じる。
二部構成──現在の事件と、その背景を描く過去の冒険物語──という本書の構成(中略)この形式はたとえば、ウィルキー・コリンズの『月長石』などもそうだし、古典ミステリの古さを表す象徴のように、言挙げされることが多い。
『シャーロック・ホームズの冒険』
『緋色の研究』は微妙に感じたが、有名な短編集であるこちらはさすがに面白い。