映画『ミッドサマー』、やっと観れた

アリ・アスター監督の映画 『ミッドサマー』 は、予告編が面白そうにも程があったので、公開当初からずっと観てみたいと思っていた。

「ホラー映画」という扱いをされているが、普通のホラーではない。アメリカの大学生男女グループが、スウェーデンの人里離れた地方で90年に一度しか行われない 夏至祭(ミッドサマー) を研究のために見に行く。しかし、その夏至祭はカルトのイベントのような異常な祭りだった。──という物語。日本語版のキャッチコピー 「明るいことが、おそろしい」 というのが見事で、心を惹かれた。

コロナウィルスのことがあるのでなかなか映画館に行きづらかったが、むしろそのために座席がほとんど空いていたので、行ってきた。


結果、面白かったかといえばまあ面白かった。明るい白夜に包まれて白い衣装を着た美しい北欧の祝祭の中に、不気味な、容赦ない倫理の欠如がふくれ上がっていく展開は、面白い。

だが、思ったよりも凡庸なホラーでもあった。村人たちが忌むことをした客を続々と消していく流れは、スリラー映画で殺人鬼が続々と人を殺していく流れと同じだ。映像も、美しい純白や明るい色に満ちたシーンは素晴らしいけれど、恐怖や忌避感を与えるシーンは凡庸で露骨で笑っちゃうような対比に堕している。

いろいろと映画本編では語られず、壁画をはじめ間接的な形で匂わせている部分がたくさんある。実際 「ディレクターズカット版」 も別に公開されているくらいだ。しかし、だとしても、総じて伏線の回収が甘いし、整合性と深みが足りないと思った。議論を巻き起こしそうな結末についても、ああいう結末にしたこと自体はわたしは賛同するが、それでもしっくり来るわけじゃない。なぜならば、物語としての説得力に欠けたままラストシーンに達したから。

ちなみに、公式サイトには「観た人限定完全解析ページ」が用意されている。

わたしはもっと、 何もかもが明るくて美しいまま恐ろしい面がふくれ上がっていくような映画 を想像していた。予告編による先入観と期待感が強かったせいだろう。結局、真っ暗の深夜に独りでこっそり証拠を撮ろうとして逆にやられる典型的なホラー展開や、頭部がスイカ割り後のスイカのようになる平凡なゴア描写に頼っているところで、少し失望した。

でも、凡庸な部分もあるとはいえ、それだけじゃない映画でもあった。観てよかったかなとは思った。

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